北京雑感―37

北京の市場―U

 

 最近の北京では、スーパーマーケットが「超市(チャオシー)」と呼ばれて、人気を博しています。フランスのカルフールやアメリカのウォールマートが進出して、大規模な店舗を展開しており、北京で勢力を伸ばしているカルフールは、北京中でかなり多くの店舗を構えているようですが、私の知っている4箇所でも、連日大繁盛で、レジが30以上も並んでいるのに長蛇の列が出来て、精算に20分もかかるのが普通です。

スーパーの品揃えは日本と同じで、ありとあらゆるものが並んでいます。私がよく行った首都体育館近くのカルフール(家楽福)は、入り口にアメリカのスーパーにあるような大きなカートが置いてあります。日本のスーパーにある籠もありますが、その籠を一つだけ、或いは上下に二つ乗せるような小さなカートはありません、少量の買い物なら、小さな籠を手に持って歩くしかありませんが、殆どの人は大きなカートを押して歩いています。一階に電器製品・時計・CD・本・衣料品・寝具・靴等が並んでいて、地階へは歩道式エスカレーターで降ります。因みに、一階には出口がありません。レジは地階にだけしかありませんので、一階で買い物が終わっても地階へ行かなくては支払いが出来ないのです。

地階へ降りると、そこは魚と肉類の売り場です。魚は殆どが量り売りで、山のように積み上げられた冷凍や半解凍の甲殻類や魚介類を自分で好きなだけ袋に詰めて、売り場の一角にある計量の係員に渡して、秤と連動して出てくるラベルを貼ってもらいます。魚売り場は、凡そスーパーの中らしくない雰囲気で、床は濡れているところがあったり、独特の臭気があってハエが飛んでいたりします。正直な所、あまり清潔な感じはしません。何年か前に、カルフールの魚に蛆が湧いていたと言う出来事があり、新聞で大きく取り上げられましたが、この臭いとハエが飛びまわる様子を見れば、当然起こりうる事件と納得してしまいました。この点、以前からある食品市場の魚屋さんでは、魚は小さいながら流水の生簀で泳がせて売っていましたし、エビなどは小出しにして売っていましたので、ハエは飛んでいても商品に止まるチャンスは非常に限られていましたから、こんな事故は起こり得ません。

中国の人々は、魚を生きたまま売買することが多くて、ちょっとしたレストランで魚料理を注文すると、水槽から掬い上げて生きたままバケツなどにいれてテーブルまで持ってきて客に見せてから料理していたのに、スーパーでこんな商品をよく買うなァと、変な所に感心しました。

魚売り場の隣は肉売り場です。始めのうちは、焼豚や?肉(ラーロウ)と呼ばれるベーコン、ハムなど加工品はもとより、生肉も塊で置いてあり、客の希望に副って切り分けて売っていましたが、次第にパックで売られるようになって来ました。

それから野菜売り場が続きます。野菜の販売は、量り売りとパック詰めが半々でしたが、これもパック詰めが段々多くなるようです。パック詰めされた野菜の品質はあまり良くないのに、割高です。私なら外の市場で選んで買うところですが、北京の人々はスーパーで買うのが好きなようです。果物はばら売りが断然多く、種類も外の市場と比べて遜色ない、或いはより豊富だと言えるかも知れません。但し値段はちょっと高めです。

その後、乳製品・食料品・パン・麺類・お菓子・化粧品・衛生用品等々の売り場が続き、どれもこれも、種類・品数共に豊富で、日本の大規模スーパーの少なくとも3倍はあるように感じます。そして、不思議なのは、地階の面積が地上階の面積より広いように思えることです。地階は道路にはみ出しているのではないかと思うほど広いのですが、こんなことは北京のお店ではよく有ります。入り口は狭いのに、奥に入ると思いがけず広い空間が開けたり、奥へ細長く続く本屋さんの中ほどで左に折れるとCDコーナーがありますが、外からは分かりません。これは海賊版CDを売るための工夫だそうです。こんなのは論外としても、北京の街には意外性が満ち溢れています。

さて、買い物で一番大事な価格です。日本の感覚では食料品はスーパーが安いと思いますが、北京では必ずしも安いとは言えないような気がします。日用雑貨について、スーパーの強みは、何と言っても種類が多いことでしょう。値段もデパートと比べれば随分安いようです。しかし、生鮮食品(魚・肉・野菜等)に関しては、外の市場と比べて高めですし、品質も決して良いとは言えません。私は、生鮮食品をスーパーで買う気はしません。

このスーパーの様子は2年前のものです。日進月歩の北京ですから、今ではいろいろ改善されていることを期待しています。

スーパーが進出する前、北京の人々は、買い物を高級品はデパートで、日常の衣類・消耗品は近くの日用品市場で、食料品は食品市場で、買い忘れは便民店でと使い分けていましたが、スーパーが出来てからは、かなりの部分をスーパーで済ませる人が多くなりました。現在、大型スーパーでの買い物は、北京の人々にとってちょっとしたステイタスシンボルになっているようです。

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