北京雑感ー15 車とマンションの購入

 

友人が新車を買いました。
ディーラーと車検の登録事務所へ行き、登録は、自分でお金を払って手続きをします。
ディーラーはサポートしてくれますが、手続きはあくまでも本人が行います。

当日、「手続きをしてから新車に乗って行く」と言うので楽しみにしていましたが、現れたのは、あのモータープールにあったのと同じく、薄っすらと土埃を被って、ボンネットに指で字が書けるような車でした。
とても新車には見えませんでしたが、車内のシートにはビニールが掛けられ、床にはマットの代わりにダンボールの切れ端が敷かれていて、あえて言えば、これが新車の証でした。

北京の車のディーラーは、買主から代金を現金で受け取るか、銀行ローンの手続きを確認してから、モータープールで該当の車を選び出し、そのまま、買主と一緒に車検登録場へ行って、登録手続きを済ませ、その場で車を引き渡して、取引完了とします。
この移動の間、日本の「仮ナンバー」のようなものを使用することはありません。
法規上どうなっているのか分かりませんが、北京の街を走っていて、仮ナンバーに相当するナンバープレートを見たことはありません。
その代わり、ナンバープレートの無い車が走っているのには、何回も遭遇しました。
状況から判断して、「登録前の車が路上を走る時は仮ナンバーが必要」と言う規定はなさそうです。

埃だらけの新車を手に入れた買主は、カー用品のお店に行って、先ず、付属の洗車場で洗車をして、豊富な在庫品の中から、フロアマットや、窓ガラスのフィルムなどを選んで装着します。
カー用品のお店は、大規模で品数も多く、どんなものでもありますが、取り付け等は、あまりやっていません。
その代わり、小規模な車内装専門店があちこちにあって、お客が、カタログで選んだ品で車の内装一式を請け負っています。
こんなお店に作業を依頼して、初めて、日本で言う新車になります。

車に乗り始めて、機械的な不具合が出た時は、メーカー直営の修理工場へ持ち込みます。この修理工場は郊外にあり、自社生産各車種の修理点検を実施しています。
この修理工場は、広大な敷地にメーカーの生産車が並び、一部に修理用施設を備えていて、メーカー直営のモータープール兼サービスステーション、或は総代理店のようです。
日本の系列販売店本社のようでもありますが、街中に営業所を置いて販売したり、修理したりすることはなく、街中では、規模の小さな修理工場を指定して、修理を代行させているようです。

中国における自動車販売の仕組みの詳細は知る由もありませんが、概略を纏めて見ると、北京では、街中で日本のような自動車販売店を見かけることは非常に少なく、偶にあっても、ショールームとしての機能が主で、一般の人々がそこで車を買うことは殆どありません。
そこでは定価販売をしていますから。自動車を買う時、人々は郊外に幾つかあるモータープールへ行きます。
そこには各メーカーの販売事務所もありますが、少しでも安い車を手に入れたい人々は、メーカーの事務所で車を見てから、周りで2〜
3坪の事務所を構えて商売をするブローカーのところで価格交渉をして買います。
そして、殆ど生産工場から出荷されたままの車を、前述のようにして内装を施して、マイカーを作り上げるのです。

最近北京で進出が著しいのは、カー用品ショップ・車の内装業者、それに洗車場です。
カー用品ショップは、売り場面積も品揃えも、日本のそれに引けを取らないどころか、それ以上だと感じました。
2005年の時点では、2階が売り場、1階が洗車場というところが多かったのですが、今頃は、同時に、内装を手がけるお店も増えたようです。利用する者にとっては、それが便利ですし、販売店にとってもメリットがありますから。 
以前の北京では、埃だらけて、ドアノブやバンパーの壊れた車が沢山走っていましたが、今ではそんな車、全く見なくなりました。
春先の黄砂が激しかった日の翌日でも、殆どの車がピカピカになって走っていたそうです。
綺麗になることはいいことですが、環境の面から、洗車に費やされる水の量を考えると、なんだか空恐ろしくなります。勿論、洗車には中水(再生水)を利用しているのでしょうが、北京における車の変化があまりに急激なので、ついつい環境への影響まで心配してしまいます。

「車の内装」に関連して、もう一つ、日本と北京で全く違うところがあることをお話したいと思います。
関連と言っても、「車」ではなく「内装」に関するものです。
中国では、マンションの販売は、建物の外側が出来た段階、つまりコンクリートがむき出しのまま引渡しをします。
販売価格には内装費は入っていないので、購入者は、物件を引き取った後、自分で内装をして、住める状態にします。
実際には、建築士に依頼し、希望を出しながら内装の設計を進めます。買ったスペースには、建物の構造上必要な壁面と柱しかありませんから、部屋のレイアウトは自由に出来ます。
間取りや内装が決まったところで、建築士に大工さんや、左官・電設・水道等の職人さんを紹介してもらい、個別に作業を依頼します。
そして、何より大変なのが、職人さんと一緒に、建材の卸売り市場へ行って、内装に必要な材料を選んで買ってこなければならないことです。
床材や浴室のタイルは勿論、ドアノブや水道の蛇口まで、自分で選んで買わなければなりません。
職人さんにアドバイスを受けますが、一つ一つ自分で買うのは大変な労力を要します。
日本のように一括して工事を任せるシステムが無いので、北京で新しいマンションを買うのは本当に大変なことです。

友人がマンション購入で苦労したのを身近で見て、若し、私が、北京で事業を起こすとしたら、建築のコーディネーターをやりたいと思いました。
人々の役に立って、確実な需要が見込める事業です。尤も、最近、私が住んでいるマンションの最上階、所謂ペントハウスがなかなか売れないので、不動産会社が内装を全部済ませ、日本のマンション販売のようなことを始めました。
そのうちに、北京のマンションも、日本のように内装をして売り出すようになるかも知れません。

 

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