北京雑感―13 北京の春節

 

 二年ぶりに、春節の北京に行ってきました。今年の春節は218日でした。

 北京空港に降り立ってビックリしたのは、気温の高さでした。
朝5時
20分町田発のバスを利用したので、朝の寒さに備えて厚着をし、「北京での行動はこの服装で」と予定していたのですが、午後3時に北京空港の外へ出た時には、額に汗が滲んで、早々にオーバーを脱いでしまいました。

 聞いてみると、2,3日前からこんな暖かさで、総体的に、今年の冬は例年よりずっと暖かいとのことでした。
一昨年の春節に、廟会(お寺の縁日)に出かけた時は、寒さが足元からしんしんと這い上がってきて、北京の冬の恐ろしさを感じたものでした。
そのときの経験から、寒さ対策を重視して衣類を持って来ましたが、すっかり調子が狂ってしまいました。
移動する車の窓から見える公園の柳の枝も、こころもち緑に見えて、
4月中頃のような光景でした。
以前は凍っていた池の水も、部分的にしか凍らず、この時期の風物詩であったスケートをする子供達の姿は全く見られませんでした。

 2月17日は除夕(旧暦の大晦日)でしたが、中国の友人が車で北京の名所を案内してくれることになりました。
初めに、オリンピック開催予定地をすぐ近くから見ることが出来ました。
本来は、フェンスに囲まれて部外者は立ち入り禁止なのですが、除夕で工事は休み、守衛さんもいないので、開いていた工事用車両出入り口から無断で進入しました。
メインスタジアムは、小枝を寄せ集めて作った大きな鳥の巣のように、外側から複雑に組み上げた鉄骨が見える建造物で、「鳥巣(
niao chao)」というニックネームがぴったりのものでした。
その隣には、プラスチック素材の立方体を積み上げたような建物がありました。
本当の材料は何か分かりませんが、一見すると、「ビニール製の四角い袋に水を入れて重ねてある」と説明されたら信じてしまいそうな質感です。
名付けて「水立方(
shui li fang)」、オリンピック用の屋内プールだそうです。両方とも一部足場は付いたままですが、外側はほぼ完成していました。
除夕でなければ、部外者がこんな近くまで車で入ってくることは出来なかったでしょう。
一日早くお年玉を貰ったような気分でした。

 その後、元大都遺跡公園・皇城公園・東便門と走って、長安街では、車一台がやっと通れるような狭い胡同に入り込んで、四合院の門の春節飾りを見ながら走ってもらいました。
このあたりは四合院が完全な形でかなり残っていて、指導者達が住んでおり、門の脇に近代的なシャッターの付いた車庫のあるのが、その目印だと教えられました。
それから車に乗ったまま天安門を抜けて、故宮の中を暫く走り、東へ抜けて、お堀の端を回ってから、故宮の東側、長安街に沿ってある菖蒲河公園で車を降りて散策しました。
この公園は前からあったようですが、最近整備されて、洒落た遊歩道になっています。
去年の秋には豊富な水が流れていましたが、今回は季節のせいか、水は少なく、中国各地からの団体観光客が幾組も、ガイドさんの旗を先頭にそぞろ歩いていました。

 北京市内各所の建設現場では、作業員が故郷へ帰るので作業は中断し、警備が手薄になって、今日のように、いつもは入れないオリンピックスタジアム建設現場や、故宮の中に入れたのですが、一方で地方から、春節の休みを利用して団体で北京見物に来る人達もいるのです。
どちらも春節ならではの現象と言えるでしょう。

 夕方から、北京市北部、昌平区の西三旗にあるマンションへ出かけて、春節を祝うことにしました。
一昨年の春節もここで過ごし、市内ではまだ原則禁止だった花火がとても綺麗に見えたので、解禁された今年はもっとすごいだろうと期待して出かけました。
6時ごろから、餃子を作り始め、料理を揃え、皆でテレビの春節晩会を見ながら食事をはじめると、外の爆竹や花火の音が次第に激しくなりました。
大きな音がするたびに、駐車場に停めてある自動車の防犯装置が反応して、ハザードランプがピカピカするのを、興味深く眺めていました。
12時になると、今まで以上に爆竹が鳴り響き、室内でも話が聞き取れない程になりました。
最後には、我々も用意した花火を持って外に出て、仲間に入りました。

 翌日も、翌々日も、朝からあちこちで爆竹が鳴り、夜空に花火があがっていました。
元宵(
115日)までは、爆竹・花火が許可されているので、元宵には、また盛り上がるのだそうです。
街のあちこちで地面に赤い花が咲いたような一画をよく目にしましたが、それは爆竹の残骸で、清掃が間に合わない所なのでした。
どうも、北京の人々は、自分たちが遊んだ跡を掃除するという習慣がないようです。

 爆竹や花火は、あまりにも数が多く、住宅のすぐ近くで大きな花火を揚げるので、事故が心配でした。
また、終わった後のゴミも目に余りました。
楽しみにしていた春節の花火でしたが、今年はマイナス面ばかりを強く感じてしまいました。 

 

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