北京雑感ー6 |
5月15日6時、北京で初めての朝は、カッコウの声で目を覚ましました。 西三環のすぐ内側ですから、驚きです。直線距離で300メートルほどのところにある紫竹院公園で鳴いているのでしょう。 もう15年近く前に、友人が冗談交じりに、「今、北京の町で見かけないものは道に痰を吐く人と、鳥と犬。(前者はとりしまりが厳しくなったから、後者は、食べられてしまうから)」と言うのを聞きました。 初めて北京に来た時、「痰を吐く人がいない」というのが嘘だとすぐ分かりました。行政の理想は高いのですが、実際はまだまだのようです。中南海はともかく、老百姓の住む町では、長年の習慣は、政府の号令でも、容易には変えられないのでしょう。 しかし、鳥や犬については、当時、街中でスズメやカラスを見かけませんでした。 犬もいないし、公園でハトが屯している光景にも出会わなかったので、「食べられてしまうから」はないにしても、鳥や犬は少ないのかも、との印象を持ちました。 それが、1999年に、縁があって清華大学のキャンパスに住んだ時、この印象はいっぺんに吹っ飛んでしまいました。清華大学のキャンパスは、学生を含めて3万人以上の人々が暮らしているのですが、緑が豊富で、しかも背の高い木が多いので、高い梢は鳥の天下で、カッコウは勿論、名前は分からないのですが、日、月、星と鳴く三光鳥のような鳥が鳴き交わしていて、深山幽谷のような趣です。一番驚いたのは、初めてキツツキのドラミングを耳にしたときで、思わず近くの木を見上げてしまいました。流石に姿は見られませんでしたが、それ以後季節が巡ってくると挨拶代わりのドラミングを耳にします。 確かに、北京の町には、スズメやハトは少ないようです。 お寺や公園にハトが屯している光景は、いまだに見たことがありません。 時折、飼われている伝書鳩が群れで小屋の近くを旋回しているのを見かけるだけです。ツバメもあまり見かけません。 私が「ツバメかな?」と思ったのは一度だけ、蓮花池へ行った時、池の上を飛ぶ鳥の飛び方がツバメのようだったので印象に残っています。 スズメは、街中で時々目にするのですが、日本ほど多くはなく、しかも「ちょっと小ぶりかな」という大きさです。捕まえて比べたわけではないので、本当のところは分かりません。 周囲の景色が伸びやかなので、中のスズメが小さく見えるだけかもしれませんね。 日本の都市では困り者のカラスですが、北京では街中で見かけません。公園の芝生をのんびりと歩いているカラスを二、三度みたことがありますから、カラスがいないわけではないのですが、街中で餌を漁る姿を見ません。 あと、鳥といえば、駕篭に飼われている鳥です。 不勉強で、まだ鳥の名前を知りませんが、とても綺麗な声で囀ります。鳥かごに覆いをして運んでいるのはお馴染みですよね。 去年あたりは、あまり見かけなかったので、流行が廃れたのかと思っていましたが、そうではなくて、鳥インフルエンザの影響で、飼い主が外に出すのを控えていたようです。今年は心配がなくなったのか、鳥かごを下げて歩いている人を見かけるようになりました。 先日釣魚台の近くへ出かけたとき、公園の木の枝に駕篭を吊るしている人々を大勢見かけました。涼しい木陰で、鳥の声を聞きながらのんびり出来る北京の老人たちは幸せだなァと思いながら帰って来ました。 幸せばかりではないかもしれませんが、少なくとも、のんびり構えることが出来る心のゆとりを見習いたいと思いました。 鳥インフルエンザの影響といえば、三虎橋路にあった鳥屋さん、生きた鳥を選ぶと、その場で絞めて羽をむしってくれるお店でしたが、なくなっていました。 鳥インフルエンザの予防のため、行政のほうから何らかの指示があったようです。周りの人々の白い目もあったかもしれません。今は小間物を売る店になっていました。 犬はどうでしょうか? 99年ごろは、犬を飼っている人が少なくて、犬の散歩はちょっとしたステイタスシンボルになっていました。 ところがその後、犬を飼う人は急激に増えて、今では珍しくなくなりました。 犬の殆どは小型犬で、シーズーが多かったのですが、最近は、ポインター等の大きな犬も見かけるようになりました。 因みに、犬の大きさによって登録料が違うのだそうですから、大型犬が増えたということは、即ち富裕層が増えたということ、そして、皆、家の中で飼っていますから、大きな家(アパートメント)が増えたということです。 そして犬のお行儀がいいのも驚きの一つです。むやみにほえたり、よその犬に飛び掛ったりする犬は見たことがありません。慣れた犬は、リードを外してもらって散歩していますが、駆け回ることなく、飼い主の言うことを良く聞きます。私が呼んでも大抵無視されます。 但し、飼い主のお行儀は今ひとつで、糞の始末をする人はまだ少ないようです。 |