北京雑感―4

 

 「歩行者優先」に慣れた日本人が北京の街を歩く時は、前回お話したように、左に交差点を見て横断歩道を渡る時、特に左後方から右折して来る車に気をつけなければなりません。
横断歩道の信号が青と言うことは、当然直進信号も青で、右折車は直進車と同じようなスピードで曲がって来ます。横断歩道に人がいても構わずに突き進んで来て、邪魔だと思うとクラクションを鳴らしますが、スピードは落としません。
歩行者優先に慣れた我々は、車がスピードダウンしてくれるものと思って渡りますが、先方はその気がないので、鼻先を猛スピードで走り去るか、ハンドルを切って、後ろに回り込んで駆け抜けて行きます。事故寸前のヒヤヒヤドキドキの場面を何度も目撃し、たまには自身でも経験しました。
北京は、歩行者優先ではなく「車優先」のようです。

 このことを肝に銘じていないと危ない思いをするところが、もう一箇所、ガソリンスタンドや駐車場への出入り口が歩道を横切っている所です。
歩道を歩いていて、この様な場所にさしかかった時は、立ち止まって車を先にやった方が無難です。
道路は車が走っているので、どうせすぐには出られないから、スピードを緩めて歩行者を先に行かせてくれるだろうと考えるのは、大きな間違いです。車はスピードを緩めず歩道を横切り、車道に進入出来ない時は、歩道を跨いで車の途切れるのを待ちます。
歩行者は、車の後ろを回り込んで進まないといけないのです。
日本の運転者のように、歩道で停まってしまったら歩行者に迷惑だから歩道の手前で歩行者をやり過ごし、車道に進入出来るようになるまで待とうとは考えないようです。
車の持ち主が歩行者に対して優越感を持っている、などと意地悪な見方は控えますが、結果として、車の優位性を主張しています。

 歩行者にとっての試練はもう一つ、横断歩道の青信号の時間が短いことです。
青信号の時間は、交通量や道幅を考慮して決定するのでしょうが、時間内に道路を横断し終えるのが難しいところが何箇所もあります。私の歩く速度は早い方ですが、信号が変わってすぐ歩き始めても、反対側の歩道に着いた時にはもう赤になっていることが何度もありました。これでは歩くのが遅い方は渡りきれません。
真ん中に安全地帯があるところでは、そこで待てば良いのですが、大部分は何もありません。おまけに自動車は歩行者がいてもスピードを緩める習慣が無いようで、渡りきれない時は、随分危ない目に会います。
この状態は、お年寄りや体の不自由な方にはとても不便です。
交差点の信号は、交通弱者も安心して利用できるように、歩行者専用信号で十分な時間をとって欲しいと思います。

 何だか、北京市の交通状況に対するクレーム集のようになってしまいましたが、最後に是非お話しておきたいのが、バス停のことです。
ご存知の通り、北京のバス路線は非常に発達していますが、そのせいもあって、同じ名前のバス停でも路線によって止まる場所が違います。
直線上で
2300メートルずれているのは仕方がないとして、交差点を曲がって500メートルも行ったところに同じ名前の停留所があったりすると混乱してしまいます。
具体的な例を挙げると、「人民大学」と言うバス停は、最低
5箇所あります。
三環状線上中央部に急行の止まる停留所が一つ、中関村南大街との交差点の西側と東側に一つずつ、中関村大街上三環状線の北側に二つ、合計五個あります。南側にもあるかも知れませんが、私は確認していないので、「最低
5箇所」と言っておきます。

 北京の人にある場所への行き方を伺うと、「○路の××で降りて…」と教えてくださいます。
私は一度、××停留所には◎路バスも行くことを見つけて、生意気にも××へ行ければ良いと考え、◎路に乗ってしまい、××で降りても話しに聞いたような道がなく、
1時間近くもさ迷い歩いてやっと目的地にたどり着いたという経験をしました。
それ以後は、必ず教えられた路線を利用することにしています。
路線が非常に多いので、全部の路線を一つの停留所に纏めるのは難しいでしょうが、停車場所が違う時は、同じ停留所名を使わず、例えば「人民大学東」とか「人民大学南」とかにして欲しいと思います。
こんな希望をしても一朝一夕には改善されないでしょうが、
2008年のオリンピックまでには何とか、少しはマシになるだろうというのが、北京の知人たちの希望的観測です。

 でも私は、北京でバスを利用する時の強い味方を見付けました。
それは、バス停毎に停車する路線を記載した地図です。同じ名前のバス停があっても、違った位置が地図上に記入されて、それぞれのバス停に、そこに止まる路線が記載されているのです。
「△△で乗り換え」と言う時に、何番路に乗って△△迄行けば、降りた所に次に乗るバスが来るのか、或はどこまで歩けば目的地へ直行するバスに乗れるのかが分かります。
この地図のお陰で、私の路線バスによる北京散歩が随分楽になりました。

    
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